農作業中の事故は、時に命に関わる重大な事故につながります。農業技術検定3級の農業基礎(共通)でも、農業機械の安全な使い方は出題される項目です。この記事では、農作業事故の実態、事故が起きやすい場面、機械ごとの注意点、作業前の点検の順に整理します。
農作業事故の実態
農林水産省の調査では、農作業中の事故で毎年200人を超える方が亡くなっています。原因で最も多いのは乗用型トラクタなどの農業機械によるもので、亡くなった方の大半は65歳以上の高齢の方です。就業者10万人あたりで比べると、農業の死亡事故の発生率は建設業など他の産業より高い水準が続いており、事故の防止は農業全体の大きな課題になっています。
事故が起きやすい2つの場面
農業機械による事故の多くは、次の2つの場面に集中しています。
- 傾斜地や道路での転倒・転落:傾斜地で急な方向転換をしたり、スピードを出しすぎたりすると、トラクタなどの機械が横転・転落する事故につながります。ほ場への出入り口の坂道や、路肩が崩れやすい農道も危険な場所です。傾斜地では速度を落とし、方向転換もゆっくり大きく行うことが基本です。
- 回転部分への巻き込み:動いている刃やチェーンなどの回転部分に手を近づけたり、衣服の袖や裾、タオルが巻き込まれたりする事故です。機械が完全に停止してから点検・調整を行うことが原則です。
トラクタで特に大切なこと
安全フレーム(キャブ)とシートベルトはセットで
トラクタには、転倒したときに運転者が押しつぶされないよう、安全フレーム(ROPS)や安全キャブが付いています。ただし、シートベルトをしていないと、転倒時に運転席の外へ投げ出されて機械の下敷きになるおそれがあります。安全フレームとシートベルトは、両方そろって初めて効果を発揮するという点が大切です。
PTO(動力取り出し軸)に近づかない
PTOは、トラクタのエンジンの力を作業機に伝える回転軸です。ロータリーなどの作業機を動かすために高速で回っているため、衣服が触れると一瞬で巻き込まれます。PTO軸のカバーを外さないこと、作業機の調整はPTOとエンジンを止めてから行うことが基本です。
道路を走るときはブレーキを連結する
トラクタのブレーキは、ほ場で小回りしやすいよう左右別々に踏めるようになっています。道路を走るときに片方だけ効くと急に向きが変わって危険なため、左右のブレーキペダルを連結してから走行します。作業機を付けたまま走るときは、後方の見え方や車幅にも注意が必要です。
刈払機・その他の機械の注意点
刈払機(草刈機)は手軽に使える反面、事故の多い機械です。
- 回転する刃が石や切り株などの硬い物に当たって跳ね返る「キックバック」に注意する。上から見て刃の右前方(時計の12時〜3時の位置)が硬い物に当たると起こりやすいため、刃先のこの部分で無理に刈らない
- 小石や草の破片が飛ぶため、保護めがね・すね当て・手袋などの保護具を着ける
- 周りに人がいるときは作業を止め、15m以上離れてもらう
コンバインなど刈取り部のある機械では、詰まった草やわらを取り除くときの巻き込み事故が多く発生しています。どの機械でも「止めてから手を出す」が共通の原則です。
作業前の点検と基本の予防策
いずれの事故も、基本的な注意を守ることで防げるものがほとんどです。
- 始業前点検を行う:燃料・オイル・ブレーキ・タイヤの空気圧・灯火類などを、作業を始める前に確認します。
- 安全カバーを外さない:作業のじゃまに感じても、回転部分をおおう安全カバーは事故防止のために設計されています。外したまま作業しないことが重要です。
- 疲れているときは無理をしない:疲労は判断力や反応速度を落とします。「疲れているときほど集中できる」というのは誤りで、長時間作業の後や体調がすぐれないときほど、慎重な操作が必要です。
- 服装を整える:袖口や裾が締まった服を着て、首のタオルは服の中に入れます。
- 作業予定を家族に伝える:一人作業で事故が起きると、発見が遅れて命に関わることがあります。行き先と帰る時間を伝えておくことも大切な予防策です。
なぜ検定に出るのか
日本農業技術検定3級では、「農業機械を使った作業中の事故を防ぐための注意点として、最も適切なものを選べ」という形式で、正しい行動と危険な行動を対比させる選択肢から選ばせる問題が出題されます。個々の注意点を覚えるだけでなく、「なぜそれが危険なのか」という理由まで理解しておくと、初めて見る場面の選択肢でも、危険かどうかを判断しやすくなります。
まとめ
農業機械の事故は、転倒・転落と回転部分への巻き込みの2つの場面に集中しています。安全フレームとシートベルトをセットで使う、PTOや回転部分は止めてから触る、道路ではブレーキを連結する、疲れているときほど慎重に操作する、という基本を守ることが事故防止の第一歩です。
演習で理解を確かめたい方は、農業基礎(共通)の一問一答もあわせてご活用ください。