牛乳のパッケージをよく見ると、「高温殺菌」「低温殺菌」といった表示を目にすることがあります。同じ「殺菌」という目的でも、実は温度と時間の組み合わせ方が複数あります。農業技術検定3級の食品系でも図から読み取らせる形でよく出題されるテーマなので、整理しておきましょう。
3つの加熱殺菌方法
牛乳の加熱殺菌には、主に次の3つの方法があります。温度が高いほど時間は短くてすみ、温度が低いほど長い時間をかける、という反比例のような関係になっているのがポイントです。
- 低温保持殺菌(LTLT): 比較的低い温度(牛乳ではおよそ63℃前後)で、30分程度かけてじっくり加熱する方法です。時間はかかりますが、熱による風味への影響が少ないとされています。LTLTは「Low Temperature Long Time」の略で、名前の通り「低温・長時間」の方法です。
- 高温短時間殺菌(HTST): 高い温度(およそ72℃以上)で、15秒程度という短い時間で処理する方法です。HTSTは「High Temperature Short Time」の略です。
- 超高温殺菌(UHT): さらに高い温度(およそ120〜150℃)で、数秒という非常に短い時間で処理する方法です。UHTは「Ultra High Temperature」の略で、日本の市販牛乳の大半はこの方法(120〜130℃で2〜3秒程度)で殺菌されています。
日本の牛乳の殺菌基準
日本では、牛乳の殺菌について「63℃で30分間加熱するか、またはこれと同等以上の殺菌効果のある方法で加熱殺菌すること」という基準が定められています。LTLTはこの基準そのものの条件で、HTSTやUHTは「同等以上の効果がある方法」にあたります。
LL牛乳はUHTだけでは作れない
常温で長く保存できるロングライフ牛乳(LL牛乳)も、UHTで殺菌されています。ただし、ふつうのUHT牛乳が冷蔵保存を必要とするのに対し、LL牛乳は、殺菌後に**無菌の環境で、光や空気を通しにくい容器に詰める(無菌充填)**ことで、常温での保存を可能にしています。「LL牛乳が常温で保存できるのは、加熱温度が高いから」だけでは不十分で、容器への詰め方まで含めた技術だという点を押さえておきましょう。
「殺菌」と「滅菌」の違い
似た言葉に「滅菌」があります。
- 殺菌:有害な微生物を死滅させたり、減らしたりすること(すべての微生物がいなくなるとは限らない)
- 滅菌:あらゆる微生物を完全に死滅させること
牛乳の加熱は、目的とする病原菌などを死滅させる「殺菌」です。缶詰やレトルト食品では、より強い加熱(レトルト食品では中心部を120℃で4分間加熱するのと同等以上)を行い、常温で長期保存できるようにしています。
低温で時間をかけて殺菌する方法は、19世紀にフランスのパスツールがワインの劣化を防ぐために考え出したことから、英語では「パスチャライゼーション」と呼ばれています。
なぜ温度と時間はトレードオフの関係になるのか
加熱殺菌の目的は、食品に含まれる微生物を死滅させて安全に食べられるようにすることです。微生物を死滅させるために必要な「熱の総量」はある程度決まっているため、温度を上げれば短い時間ですみ、温度を下げれば長い時間が必要になる、という関係が成り立ちます。
一方で、加熱の温度や時間は、風味や栄養、色などにも影響します。高温で短時間の処理ほど、全体としては熱による風味の変化を抑えやすいとされ、一方で、UHTのように100℃を大きく超える加熱をすると、牛乳に独特の加熱臭(こげたような香り)が出やすくなります。そのため、生乳に近い風味を重視する牛乳にはLTLTやHTSTが使われる、というように用途に応じて使い分けられています。パッケージの「種類別」や「殺菌」の欄を見ると、その牛乳がどの方法で殺菌されたかを確認できます。
なぜ検定に出るのか
日本農業技術検定3級の食品系では、「図はA・B2種類の加熱殺菌方法の温度と時間の関係を表したものである。低い温度で長い時間かけて行う方法を何というか」というように、グラフから温度と時間の関係を読み取らせる形式で出題されます。用語の名前を暗記するだけでなく、グラフの縦軸(温度)・横軸(時間)のどちらが大きいか小さいかを見て判断できるようにしておくことが大切です。
まとめ
牛乳の加熱殺菌には、低温で長時間かけるLTLT、高温で短時間のHTST、さらに高温で数秒のUHTという3つの方法があり、温度が高いほど処理時間は短くなるという関係があります。グラフの読み取り問題として出題されることが多いので、それぞれの位置関係(温度の高さと時間の長さ)を図でイメージできるようにしておきましょう。
演習で理解を確かめたい方は、食品系の一問一答もあわせてご活用ください。