病害虫の防除は、栽培系でも農業基礎(共通)でも出題される定番テーマです。よく問われるのは、「防虫ネットを張るのは何的防除か」「テントウムシを放すのは何的防除か」というように、具体的な作業がどの分類に当てはまるかを答えさせる形式です。分類の考え方さえつかめば、初めて見る作業でも判断できるようになります。
防除は大きく4つに分けられる
病害虫防除は、次の4つに分類されます。
- 耕種的防除:栽培のやり方そのものを工夫して発生をおさえる
- 物理的防除:物理的な力や資材で害虫や病原菌を防ぐ・取り除く
- 生物的防除:天敵など、他の生物のはたらきを利用する
- 化学的防除:農薬などの化学物質を使う
判断に迷ったら、何を使って防いでいるかを考えるのが近道です。栽培計画なら耕種的、モノや物理的な力なら物理的、生き物なら生物的、薬剤なら化学的、という対応になります。
耕種的防除:栽培の工夫でおさえる
耕種的防除は、作付けの計画や栽培管理のしかたを工夫することで、そもそも病害虫が発生しにくい状況をつくる方法です。特別な資材を使わないのが特徴で、次のようなものが該当します。
- 輪作:同じ科の作物を続けて作らず、作付けを入れ替える。特定の病原菌や線虫が増えるのを防ぎます
- 抵抗性品種の利用:その病害に強い性質を持つ品種を選ぶ
- 接ぎ木苗の利用:病気に強い台木に接ぐことで、土壌伝染性の病害を回避する
- 健全な種子・苗を使う:病原菌を持ち込まない
- 適正な施肥・株間:肥料の与えすぎで軟弱に育てない、風通しをよくして多湿を防ぐ
- ほ場の衛生管理:発病した株や残さを片づけ、伝染源を減らす
連作障害を避ける輪作は、耕種的防除の代表例です。詳しくは連作障害と輪作の基本で扱っています。
物理的防除:物や力で遮断する
物理的防除は、物理的な手段で害虫の侵入を防いだり、病原菌を死滅させたりする方法です。
- 防虫ネット・寒冷紗:害虫の侵入そのものを遮断する
- 黄色粘着トラップ:飛来した害虫を粘着面で捕らえる
- シルバーマルチ:光を反射させ、アブラムシの飛来をかく乱する
- 太陽熱消毒:夏場にビニールで被覆し、地温を上げて土壌中の病原菌や害虫を死滅させる
- 熱湯・蒸気消毒:熱で病原菌を処理する
- 捕殺:害虫を手で取り除く
「防虫ネットは害虫という生き物を相手にしているから生物的防除では?」と迷う人がいますが、利用しているのは網という物理的な遮断なので物理的防除です。判断の基準は、対象が生き物かどうかではなく、手段が何かである点に注意してください。
生物的防除:天敵のはたらきを利用する
生物的防除は、その害虫を食べたり寄生したりする他の生物、いわゆる天敵を利用する方法です。
- テントウムシ(ナミテントウなど):アブラムシを捕食する
- チリカブリダニ:ハダニ類を捕食する
- 寄生蜂:害虫に卵を産みつけて寄生する
- 微生物農薬:病原菌に拮抗する微生物や、害虫に感染する微生物を利用する
生物的防除は、農薬の使用量を減らせること、害虫が抵抗性を獲得しにくいことが利点です。一方で、効果が現れるまでに時間がかかること、天敵が生きられる環境(温度など)を保つ必要があることが課題になります。
なお、天敵を利用する製剤は「生物農薬」と呼ばれ、法律上は農薬として扱われるものもあります。ただし試験で分類を問われた場合は、天敵という生物を利用している点をとらえて生物的防除と判断します。
化学的防除:農薬を使う
化学的防除は、殺虫剤・殺菌剤・除草剤といった農薬を使う方法です。効果が早く確実で、広い面積を短時間で処理できるのが最大の利点です。
一方で、次の点に注意が必要です。
- 抵抗性の発達:同じ系統の農薬を使い続けると、効きにくい個体が増える。系統の異なる薬剤をローテーションで使うことが対策になります
- 使用基準の遵守:作物ごとに、使用できる農薬・希釈倍率・使用回数・収穫前日数(使用時期)が定められています
- 周辺への配慮:飛散(ドリフト)による近隣作物への影響、天敵や訪花昆虫への影響
希釈倍率の計算は3級でもよく出題されます。解き方は肥料の計算問題を攻略するで、肥料計算とあわせて整理しています。
IPM(総合的病害虫・雑草管理)
近年重視されているのがIPM(総合的病害虫・雑草管理)という考え方です。これは、いずれか一つの方法に頼るのではなく、耕種的・物理的・生物的な手段を優先的に組み合わせ、必要な場合に限って化学的防除を行うという進め方です。
目的は、害虫を根絶することではなく、経済的な被害が出ない水準まで発生をおさえることにあります。農薬の使用量を減らし、環境への負荷や抵抗性の発達をおさえながら、安定した生産を続けることをねらいとしています。
分類の判断手順
問題を解くときは、次の順で考えると迷いません。
- 農薬・薬剤を使っているか → 化学的防除
- 天敵など生物を利用しているか → 生物的防除
- ネット・マルチ・熱・手作業など、物や力で防いでいるか → 物理的防除
- 作付け計画や品種選び、栽培管理の工夫か → 耕種的防除
演習で確認しよう
栽培系の一問一答と農業基礎(共通)の一問一答の両方に、防除法の分類を問う問題を収録しています。実際に判断してみると、基準が身につきます。