結論:植物が育つのに欠かせない必須元素は17種類とされ、多く必要な多量要素と、わずかでよい微量要素に分けられます。欠乏症は、体の中を移動しやすい元素(窒素・リン・カリウム・マグネシウム)では古い葉から、移動しにくい元素(カルシウム・ホウ素・鉄など)では新しい葉や生長点から現れます。
肥料の三要素(窒素・リン酸・カリ)はよく知られていますが、植物が必要とする元素はそれだけではありません。農業技術検定3級では、元素の名前と欠乏したときの症状を結びつける問題がよく出題されます。この記事では、必須元素の全体像と、欠乏症を見分けるコツを整理します。
必須元素は17種類
植物が正常に生育し、一生を全うするために欠かせない元素を必須元素といいます。一般に17種類とされます(ニッケルを含めない数え方では16種類)。
| 区分 | 元素 |
|---|---|
| 空気や水から得る元素 | 炭素(C)、水素(H)、酸素(O) |
| 多量要素(土や肥料から得る) | 窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S) |
| 微量要素 | 鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、塩素(Cl)、ニッケル(Ni) |
多量要素のうち、特に多く必要で不足しやすい窒素・リン・カリウムを肥料の三要素、これにカルシウムとマグネシウムを加えたものを肥料の五要素と呼ぶことがあります。微量要素は必要な量はわずかですが、不足すると生育に大きな障害が出ます。また、多すぎても害(過剰症)が出やすいのが特徴です。
欠乏症は「どの葉に出るか」で見分ける
欠乏症を見分ける最大のコツは、症状が**古い葉(下の葉)**に出ているか、**新しい葉(上の葉・生長点)**に出ているかを確認することです。
- 体の中を移動しやすい元素(窒素・リン・カリウム・マグネシウム)は、不足すると植物が古い葉から新しい葉へ移して再利用します。そのため、症状は古い葉から現れます。
- 体の中を移動しにくい元素(カルシウム・ホウ素・鉄・マンガン・硫黄など)は、一度古い葉に入ると新しい葉へ移せません。そのため、症状は新しい葉や生長点、果実から現れます。
主な元素のはたらきと欠乏症状
| 元素 | 主なはたらき | 欠乏症状 | 症状が出る場所 |
|---|---|---|---|
| 窒素(N) | 葉や茎の生育、たんぱく質や葉緑素の成分 | 葉全体が黄色くなり、生育が悪くなる | 古い葉から |
| リン(P) | 花や実のつき、根の伸び、エネルギーの受け渡し | 葉が暗い緑色〜紫色になり、生育が遅れる。花や実のつきが悪くなる | 古い葉から |
| カリウム(K) | 根の発達、水分の調節、病気や寒さへの抵抗力 | 葉の縁から黄色くなり、やがて褐色に枯れる | 古い葉から |
| マグネシウム(Mg) | 葉緑素の中心となる成分 | 葉脈の間が黄色くなる(葉脈は緑色のまま残る) | 古い葉から |
| カルシウム(Ca) | 細胞壁を丈夫にする | 生長点の枯死、トマトの尻腐れ果、ハクサイやキャベツの縁腐れ(心腐れ) | 新しい葉・果実 |
| ホウ素(B) | 細胞壁の形成、花粉の発芽 | 生長点の異常、ダイコンやカブの根の内部が褐色になる、セルリーの茎割れ | 新しい葉・生長点 |
| 鉄(Fe) | 葉緑素をつくるのに必要 | 新しい葉の葉脈の間が黄色くなる | 新しい葉 |
| マンガン(Mn) | 光合成にかかわる酵素のはたらき | 新しい葉の葉脈の間が黄色くなる | 新しい葉 |
マグネシウムと鉄・マンガンは、どれも「葉脈の間が黄色くなる」症状が出るため混同しやすい組み合わせです。古い葉ならマグネシウム、新しい葉なら鉄やマンガンと、出る場所で区別しましょう。
窒素は「多すぎ」にも注意
窒素は生育を大きく左右する元素ですが、多すぎても問題が起こります。
- 茎や葉ばかりが茂り、軟弱に育つ(徒長)
- 病気や害虫の被害を受けやすくなる
- 実がつきにくくなる(トマトやマメ類の「つるぼけ」)
- 水稲では倒伏しやすくなり、米のたんぱく質含量が上がって食味が落ちる
肥料は多ければよいわけではなく、作物と生育段階に合わせて適量を与えることが大切です。
土のpHと欠乏症の関係
土に元素が十分あっても、土壌のpHによっては植物が吸収できず、欠乏症が出ることがあります。
- 酸性の土では、リンがアルミニウムなどと結びついて吸収されにくくなります。また、マンガンが溶け出しすぎて過剰症が出ることがあります。
- アルカリ性の土では、鉄・マンガン・ホウ素・亜鉛などが吸収されにくくなり、欠乏症が出やすくなります。
多くの作物は、弱酸性(pH6.0〜6.5程度)の土で養分を吸収しやすいとされています。石灰を入れすぎてアルカリ性に傾けると、かえって微量要素の欠乏を招くことがあるので注意が必要です。土壌pHの調整については土壌の三相分布と団粒構造・pHで解説しています。
欠乏症かどうかを判断するときの注意
カルシウム欠乏によるトマトの尻腐れ果は、土にカルシウムが足りていても起こることがあります。土が乾燥して根からの水の吸収が滞ると、水といっしょに運ばれるカルシウムも果実まで届かなくなるためです。欠乏症のように見える症状でも、水分の管理や根の傷み、土壌pHなど、吸収を妨げている原因がないかもあわせて確認することが大切です。
引っかけ選択肢のパターン
- 「窒素が欠乏すると、新しい葉から黄色くなる」:移動しやすい元素なので、正しくは古い葉から
- 「トマトの尻腐れ果は、マグネシウムの欠乏で起こる」:正しくはカルシウム
- 「アルカリ性の土では、鉄の欠乏は起こりにくい」:アルカリ性では鉄が吸収されにくくなる
- 「微量要素は、多く与えるほど生育がよくなる」:微量要素は過剰症が出やすい
演習で確認しよう
元素と症状の対応を整理したら、農業基礎(共通)の一問一答で確認してみましょう。肥料の成分計算については肥料の計算問題を攻略するで解説しています。