食品をつくる・扱う仕事で、もっとも気をつけなければならないのが食中毒です。農業技術検定3級の食品系では、原因となる細菌やウイルスの特徴、予防の考え方がよく出題されます。この記事では、食中毒の種類、主な原因と特徴、予防の3原則、そして衛生管理の手法であるHACCPを順に整理します。
食中毒の主な種類
食中毒は、原因によって大きく次のように分けられます。
| 種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 細菌性 | 細菌やその毒素が原因 | サルモネラ属菌、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌 |
| ウイルス性 | ウイルスが原因 | ノロウイルス |
| 自然毒 | 動植物がもともと持つ毒 | フグ毒、毒キノコ、ジャガイモの芽 |
| 寄生虫 | 魚などにつく寄生虫 | アニサキス |
| 化学性 | 有害な化学物質 | ヒスタミン(鮮度の落ちた魚) |
細菌性の食中毒は、さらに2つのタイプに分けられます。
- 感染型:食品と一緒に取り込んだ細菌が、体の中で増えて発症する(サルモネラ属菌、腸炎ビブリオ、カンピロバクターなど)
- 毒素型:細菌が食品の中でつくった毒素を食べて発症する(黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌など)
主な原因と特徴
サルモネラ属菌
鶏卵や食肉が主な原因になります。熱に弱いため、十分に加熱すれば防げます。卵は冷蔵で保存し、割ったらすぐに使うことが基本です。
カンピロバクター
鶏肉の生食や加熱不足が主な原因で、近年の細菌性食中毒で特に件数の多い原因菌です。少ない菌の数でも発症するため、肉をさわった手や調理器具から、ほかの食品に菌を移さないことが大切です。
腸炎ビブリオ
海水にすむ細菌で、魚介類が原因になります。塩分のある環境を好み、真水に弱いので、魚介類は真水(水道水)でよく洗うことが予防になります。夏に多い食中毒です。
黄色ブドウ球菌
人の手指の傷や鼻の中などにいる細菌で、おにぎりなど手でさわる食品が原因になりやすい菌です。この菌がつくる毒素(エンテロトキシン)は熱に強く、加熱しても壊れにくいため、「つけない」ことが何より重要です。手に傷があるときは、手袋をして調理します。
ボツリヌス菌
酸素のない環境で増える細菌で、缶詰・びん詰・真空包装の食品などが原因になることがあります。毒素は非常に強力ですが、十分に加熱すると壊れます。
ウエルシュ菌
カレーやシチューなど、大きな鍋で大量に作って室温で放置した料理で増えやすい細菌です。熱に強い芽胞をつくって加熱を生きのび、冷めていく途中で増えます。作った料理は小分けにして早く冷ますことが予防になります。
ノロウイルス
冬に多く、カキなどの二枚貝や、感染した人の手を介して広がります。食品の中では増えませんが、ごく少量でも感染します。アルコール消毒が効きにくいため、調理器具などの消毒には次亜塩素酸ナトリウムが使われます。食品は中心部を85〜90℃で90秒以上加熱することが目安とされています。
予防の3原則
食中毒を防ぐ基本は、次の3つです。
- つけない:手洗いを徹底し、生の肉や魚に使った包丁・まな板は、ほかの食品と分けて使う(二次汚染を防ぐ)
- 増やさない:食品は低温で保存し、調理後は早めに食べる。細菌の多くは室温(20〜40℃前後)でよく増えます
- やっつける:加熱で細菌やウイルスを殺す。肉などは中心部を75℃で1分以上加熱するのが目安です
どの原因に対してどの原則が特に効くかを結びつけて覚えておくと、問題に答えやすくなります。たとえば、加熱に強い毒素をつくる黄色ブドウ球菌には「つけない」、室温で増えるウエルシュ菌には「増やさない」が特に重要です。
季節で変わる注意点
細菌性の食中毒は、気温と湿度が高く細菌が増えやすい夏に多く発生します。一方、ノロウイルスによる食中毒は冬に多く、1年を通して見ると、季節によって注意すべき原因が入れかわります。「食中毒は夏だけ気をつければよい」という考えは誤りです。
HACCP(ハサップ)の考え方
HACCPは、食品をつくる工程の中で、食中毒などの危害が起こりうる場面をあらかじめ分析し、特に重要な工程(たとえば加熱の温度と時間)を決めて、そこを継続的に監視・記録する衛生管理の方法です。完成した製品を抜き取って検査するだけの方法に比べ、問題が起きる前に防げる点が特徴です。
日本では、2021年6月から、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められるようになりました。食品系の問題では、HACCPの「危害要因の分析」「重要管理点」といった言葉の意味が問われることがあります。
演習で確認しよう
食中毒の原因と予防を整理したら、食品系の一問一答で具体的な問題に取り組んでみましょう。保存の仕組みは食品の保存方法を整理する、殺菌の温度と時間は牛乳の殺菌方法を整理するでも解説しています。