結論:農薬は、国に登録されたものを、ラベルに書かれた使用基準(適用作物・使用量や希釈倍数・使用時期・総使用回数など)どおりに使うことが法律で定められています。使用時期の「収穫○日前まで」や総使用回数を守ることで、収穫物に残る農薬(残留農薬)が基準値を超えないようにしています。
農薬は、病害虫や雑草から作物を守るための大切な資材ですが、使い方を誤ると、作物や人の健康、環境に悪い影響を与えます。農業技術検定3級では、農薬の種類やラベルの読み方、安全な使用に関する問題がよく出題されます。この記事では、農薬を正しく使うための基本を整理します。
農薬の種類
農薬は、目的によって次のように分けられます。
| 種類 | 目的 |
|---|---|
| 殺虫剤 | 害虫を防除する |
| 殺菌剤 | 病気(病原菌)を防除する |
| 除草剤 | 雑草を防除する |
| 殺虫殺菌剤 | 害虫と病気を同時に防除する |
| 殺そ剤 | ネズミを防除する |
| 植物成長調整剤 | 植物の生育を促進したり抑えたりする(着果促進、草丈の抑制など) |
植物成長調整剤も農薬に含まれる点は、見落としやすいポイントです。また、天敵として利用する昆虫や微生物を製品にしたもの(生物農薬)も、農薬として登録されています。
剤型(製剤の形)
同じ有効成分でも、使いやすいようにさまざまな形に加工されています。
| 剤型 | 特徴 |
|---|---|
| 乳剤 | 有効成分を有機溶剤などに溶かした液体。水で薄めると白く濁る |
| 水和剤 | 粉末を水に分散させて使う |
| フロアブル剤 | 水和剤を液状にしたもの。粉が舞わず計量しやすい |
| 粒剤 | 粒状で、薄めずにそのまま土や水田に散布する |
| 粉剤 | 粉末で、そのまま散布する |
乳剤・水和剤・フロアブル剤は水で薄めて散布し、粒剤・粉剤は薄めずにそのまま使う、と分けて覚えましょう。薄める倍率の計算は肥料の計算問題を攻略するで解説しています。
ラベルの見方:使用基準
農薬の容器のラベルには、その農薬を使ってよい条件が書かれています。農薬取締法にもとづき、使用者はこの使用基準を守らなければなりません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 適用作物 | 使ってよい作物。書かれていない作物には使えない |
| 適用病害虫・雑草 | 効果が確認されている対象 |
| 使用量・希釈倍数 | どれだけの量を、どれだけに薄めて使うか |
| 使用時期 | 「収穫7日前まで」など、収穫の何日前まで使えるか |
| 本剤の使用回数 | その農薬を1作の間に使ってよい回数 |
| 有効成分を含む農薬の総使用回数 | 同じ有効成分を含む別の農薬も合わせて、1作の間に使ってよい回数 |
| 有効年月 | 品質が保証される期限 |
特に注意したいのが総使用回数です。商品名が違っても、同じ有効成分を含む農薬は合計の回数で数えます。
使用時期や使用回数が決められているのは、散布した農薬が時間とともに分解・減少するためです。収穫までの日数を守れば、収穫物に残る農薬の量が基準値以下になるように、使用基準が設定されています。
ポジティブリスト制度
ポジティブリスト制度は、食品に残留する農薬などについて、原則としてすべてに基準値を設け、基準値を超えて残留する食品の流通を禁止する制度です。2006年に始まりました。
基準値が個別に決められていない農薬についても、**一律基準(0.01ppm)**が適用されます。このため、隣の畑からの農薬の飛散(ドリフト)で、本来その農薬を使っていない作物に基準値を超えて残留すると、出荷できなくなるおそれがあります。風の弱い日に散布する、飛散しにくいノズルを使う、周囲の作物に配慮するといった対策が重要です。
安全な使い方
農薬を使う人の健康を守るため、次の点を守ります。
- 防護具を着ける:マスク、保護めがね、手袋、長袖の作業着などを着用し、皮膚や口から農薬が入らないようにする
- 散布中は飲食や喫煙をしない
- 作業後は手や顔を洗い、うがいをする
- 体調が悪いときは散布しない
- 余った薬液を川や水路に捨てない:必要な量だけを調製し、使い切る
- 鍵のかかる場所に保管する:他の容器に移し替えず、食品と区別して保管する
薬剤抵抗性を防ぐ
同じ系統の農薬をくり返し使うと、その農薬が効きにくい害虫や病原菌が増える薬剤抵抗性(耐性)が発達することがあります。作用のしくみが異なる系統の農薬を交互に使うローテーション散布や、農薬だけに頼らず、耕種的・物理的・生物的な防除を組み合わせる総合的病害虫・雑草管理(IPM)が勧められています。防除の考え方は病害虫防除の4分類で解説しています。
引っかけ選択肢のパターン
- 「ラベルの適用作物に書かれていなくても、同じ科の作物には使ってよい」:適用作物にない作物には使えない
- 「商品名が違えば、同じ有効成分の農薬でも使用回数は別々に数える」:総使用回数は合算する
- 「粒剤は、水で薄めてから散布する」:粒剤はそのまま散布する
- 「基準値が決められていない農薬は、いくら残留してもよい」:一律基準0.01ppmが適用される
演習で確認しよう
農薬の基本を整理したら、農業基礎(共通)の一問一答で確認してみましょう。農業機械の安全な使い方は農業機械の安全な使い方で解説しています。